昨年、GoogleがChromeによるサードパーティーCookieの取り扱い廃止を遅延を発表をした際に、近日中に大きな変化が起ることは予測されていました。予測に違わず、1月25日Googleは、インタレストベース広告のための新しい「プライバシーサンドボックス」の提案となるTopics APIを発表しました。Topicsは、Federated Learning of Cohorts (FLoC)に 代わり、消費者の関心を反映するものであり、FLoCのようにインタレストベースのコホートに分類するものではありません。
「プライバシーサンドボックス」関連の提案の進化を見守ってきた人々にとって、これは自然な流れでした。FLoCのGDPRとの整合性、またデータ使用の透明性を保ちつつ、消費者のプライバシーを保護する機能に関する懸念があったことから、Googleはそれを反映した新しい提案を開発することになったのです。
Googleが今後もIndex Exchangeを含むオープンアドテクのコミュニティーとのやり取りを進め、フィードバックを得ていくことにより、Topics APIはさらなる進化を遂げていくことでしょう。前回の提案と比較すると、TopicsはサードパーティーCookieの廃止後、より使いやすく、よりプライバシーの保護に注力しながら、 Chromeにおけるアドレッサビリティーを提供してくれるようです。
Topics APIとは?
Topicを使用すると、消費者がChromeブラウザを使用して閲覧するコンテンツにより、関心を持つ話題にグループ分けされます。例えば、2022年オリンピック大会に関する記事を読んでいる消費者は、「スポーツ」の関心グループに追加されます。その後、同じ消費者がTopicsを利用する別のウェブサイトにアクセスすると、APIがそのパブリッシャーの広告パートナーに対し、最大3件の関心ある話題のラベルを送信し、その消費者がどの広告カテゴリーに関心を示す可能性があるかを伝えます。
このAPIは消費者データに分散型のアプローチをとるため、多くのプライバシー擁護者にとっては朗報でしょう。Topicsは、Googleその他外部の業者のサーバー上ではなく、消費者自身のブラウザ上に保存されます。Googleの説明によると、「Topicsは3週間保存された後、古いものから削除されます。」さらに消費者のプライバシー保護の強化をとして、Topicsの分類法には、人種や性別等のセンシティブな情報は含まれません。
FLoCからの改善点
- より強力なプライバシー保護:消費者プライバシーの擁護者は、FLoCがその設計上、センシティブな話題にもとづいて消費者がトラッキングされる可能性があることに懸念を表明していました。センシティブなカテゴリー内のコンテンツはFLoCの計算から排除されていたものの、とりわけ高度な機械学習技術を利用することで、FLoCクラスターからセンシティブな話題を推測することは依然として可能でした。さらに、第三者がFLoC IDを利用できる方法に関しては、不明確な状態でした。
Topicsでは、明示的に関心ある話題により消費者をグループ分けするとともに、グループの識別子ではなく、関心事そのものをコミュニケーションで使用することで、前述の懸念に関し、改善を図っています。グループ数が減少し、より一般的なものになっています: FLoCでは、約3万件のコホートが設定されていましたが、Topics API GitHubページには、約350件のカテゴリーラベルのみ列挙されています。
- 透明性と管理性の向上:FLoCでは、データの使用方法に関し、消費者には限定的なインサイトしか提供されていませんでした。1件のコホートでどのような関心事が共有されているかを知るのは、(設計上)困難なことでした。そのため、コホートIDと多様なコンテンツの間の相関性を見出すには、パートナーに依存するか、自社でインサイトを開発する必要があり、メディアオーナーにとっても困難な状況でした。
Topicsでは、消費者が自身の属するグループを表示し、グループから自身を削除したり、完全に登録を解除したりすることができるようになります。
- より簡単に、使いやすく:FLoC IDには固有の意味が無く、Chrome自体から見ても、特定の消費者同士が同じグループに入れられている理由は理解できませんでした(それが名称にある「federated」という語の所以です)。Google社外の人は、これらのIDをマーケターにとって 実行可能なものとするためには、追加でインテリジェンスとデータサイエンスを実施する必要があります。Topicsでは、分類法が明解な言葉で説明されているため、インタレストベースのオーディエンスで即時に実行可能な分かりやすいソリューションを提供できます。このことで、大小問わず様々なメディアオーナーが、自社の消費者が持つ関心事の概要に関する集計インサイトを入手することが容易となります。
FLoCからの変更点と進化について詳しくは、GoogleのGitHubページをご覧ください。
継続的に討議中の話題
FLoCからの改善点はあるものの、依然としてプライバシー擁護者やマーケターにはいくつかの懸念や疑問が残されています。まず、Topics APIは、消費者自身を他者の目にさらすことはないにせよ、未だ基本的に広告目的で消費者の関心事を公開するものです。これは依然として、一部のプライバシー擁護者にとっては、たとえば純粋なコンテンツターゲティングソリューションと比較して、許容できるものではありません。
次に、マーケターはTopics APIの効果性について理解したいと願っています。Topicsは、FLoCのコホートIDよりも細分化されていないため、マーケターがインパクトの強い広告ターゲティングを打ち出すには、一般化しすぎていると感じるかもしれません。
メディアオーナーとバイヤーへの影響
Cookie廃止後のウェブ環境は、認証済みと非認証オーディエンスの2つのグループに二分されることでしょう。マーケターにとって課題となるのは、これらのオーディエンスにいかにして到達するかということです。パブリッシャーにとっての課題は、いかにしてそこからマネタイゼーションを実現するかということです。Topics APIは、世界市場の約65%のシェアを持つChromeの膨大な普及率を活用し、非認証オーディエンスに訴求し、マネタイゼーションを実現するための直感的かつ高効率な方策を提供してくれるように思えます。
業界がTopics APIを試用開始する頃には、さらに理解を深めることができますが、第一印象としては、期待が高まっています。
オープンウェブは、マーケティング投資と価値交換に依存しています。その見返りとして、私たちは生活が豊かになる素晴らしいコンテンツを楽しむことができるのです。Topics APIの提案は、サードパーティーCookieが終焉を迎えた後も、躍動するオープンウェブに健全性をもたらす基盤を据えるものとなります。
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