近年、ライブ配信における広告は大きな変化を遂げています。より多くの視聴者が、スポーツ中継、ニュース、その他イベントを従来のTVではなく、ストリーミングサービスを利用するにつれて、広告業界もその変化に追いつくために方向転換を進めています。
ストリーミングサービスへの移り変わりは、2022年のFIFAワールドカップに顕著に見られました。これ以降、スポーツ観戦の選択肢としてストリーミングサービスが定着し始めました。AbemaTVの調査によると、ライブ配信中の広告は、18~65歳の幅広いオーディエンスにリーチしていることが明らかになりました。さらに、15秒間の広告では94%の高い平均完全視聴率を達成しています。スポーツイベントは、マーケターにとって大きな機会を提供します。実際に、FreeWheelの調査(英語)では、ライブ配信中に配信した広告は、ブランドのイメージを向上し、オーディエンスにより効果的にメッセージが伝わることが分かりました。
これまで、大型イベントの在庫は、アップフロントのようなリニアバイイングを介して売られていました。ストリーミングに収益化を移行し、ライブ配信の在庫をプログラマティックに解放することは、マーケターにとって大きな変化をもたらします。費用を掛けず、アップフロントの大きな制約もなく、関心の高い視聴者の注意を引き付けることができます。
近年、ストリーミングの成長とアドテクが発展した中で、どういったことが、ライブ配信におけるプログラマティック広告の可能性を妨げているのでしょうか。
ライブ配信におけるプログラマティック広告の課題
- ライブ配信の在庫におけるシグナリング:ライブ配信中にプログラマティック広告を配信する際の大きな課題の一つに、他のトラフィックからの在庫を見分けるシグナルが十分でないことがあります。Open RTBコンテンツオブジェクトにおける、ライブ配信のアトリビューションは、コンテンツがライブ配信されていることをシグナリングするために使用されます。しかし、事前に録画された番組と、ライブ、リアルタイムのコンテンツと区別するには不十分です。例えば、時間が設定されていないコマーシャル枠があるライブ配信のスポーツ試合、または授賞式には、個別のトラフィックパターンや要件があります。
試合前の番組やレッドカーペットを網羅した番組などライブイベントに関連する、イベント開始前のコンテンツは、他のライブ配信の在庫との価値が異なるため正確なシグナリングが必要です。
このようなシグナリングは、ライブ配信の在庫を特定するために非常に重要であり、メディアバイヤーはキャンペーンを効果的に調整し、さまざまな入札最適化プロセスを適用できます。新しいフィールドを標準化するために、OpenRTBの仕様を改善することは、重要な起点です。 - インフラの拡張性:インフラは、ライブ配信イベント中の膨大な広告リクエストに対応できなければいけません。ライブイベント、特にスポーツの決勝戦や大きな政治討論のような人気のあるイベントは、視聴者が急増し、広告リクエストが高騰する可能性があります。プログラマティックのインフラ(英語)が、遅延や不具合なくデマンドに対応できるよう拡張することは、スムーズな視聴者体験を維持し、広告収入を最大化するために不可欠です。
- 迅速な有効化と予算のペーシング:ライブ配信イベントの性質上、素早い有効化と正確な予算のペーシングが求められます。バイヤーは、エンゲージメントが高い瞬間を逃がさないよう、リアルタイムでキャンペーンを実施し、調整しなければいけません。もしくは、バイヤーが次のライブ配信イベントの準備をするには、予測データが必要になります。効果的な予算ペーシングは、イベント全体を通して一貫した広告を配信するため、初期段階で予算を使いすぎてしまい、後半で機会を逃してしまうという失敗を防ぐことができます。
- 幅広い収益化戦略をサポート:ライブイベントのストリーミングには、様々なメディア企業やバイヤーのニーズに対応する柔軟な収益化戦略(英語)が必要です。従来のTV形式のシェア・オブ・ボイス(SOV)バイイングは、バイヤーが関心の高い視聴者のシェアを保証するものでしたが、ターゲティング広告のためにデータを活用する、的確にリーチ可能な購買方法と併用できなければいけません。この双方的なアプローチは、広範囲にリーチするキャンペーンとにターゲティングされたリアルタイム広告の両方に対応することで、収益の可能性を最大化することができます。
今後の方針:拡張可能なソリューションに向けた連携
ライブイベントの広告のさまざまな方法を紹介する単発の導入は成功していますが、プログラマティック ・ストリーミングTVで実際に拡張可能なソリューションを実現するには、業界が一丸となって取り組む必要があります。 一部の大手企業はすでに独自のテクノロジーに投資していますが、視聴者を含むすべての関係者にメリットをもたらすには、メディア企業からバイヤー、アドテクプロバイダーまでサプライチェーン全体で協力的なアプローチが必要です。
断片的なソリューションの現状は、標準化と相互運用性の必要性を際立たせています。業界全体の標準とベストプラクティスは、プロセスを簡易化するだけでなく、異なるプラットフォーム間とテクノロジーがスムーズに機能することを確実にしてくれます。このコラボレーションは、プログラマティック広告の効率性と効果を向上するだけでなく、ライブ配信という未知の領域の発展と成長を促進します。
率先した取り組み:継続的な試みと行動喚起
プログラマティック広告環境におけるライブ配信広告の課題の対処と改善に取り組むため、既にいくつかの戦略を実行しています。
IAB Tech LabのAd Break Managementワーキンググループの主導権を握る一貫として、Index Exchangeは、OpenRTB 2.6仕様のコンテンツオブジェクトに追加される「content.liveevent」という新しいアトリビューションの提案を共同で行っています。この提案は、ライブイベントのシグナリング向上のため新しいフィールドを標準化することを目的としています。
また、ストリーミングの様々な事例や戦略におけるライブイベント広告配信のガイダンスを確立するため、新たに設立されたLive Event Ad Servingサブワーキング・グループをリードし活動しています。インフラ、スピードとペーシング、柔軟な収益化といった他の既存の課題に対処するため、当社は3つの主な目標達成に取り組みます。
- セラーが、ライブ配信イベントの有無と詳細をDSPとバイヤーに事前に通知することを可能にする
- デジタルの測定メリットとプログラマティックギャランティードのオプションを備えた、リニアスタイルのSOVバイイングを促進する
- DSPのQPS制限内で運用しつつ、ライブイベントにおける非保証型デマンドの配信を促す
このワーキンググループでは、それぞれの状況に応じたソリューションを開発するため、ライブ配信における広告に関する知識や見解を共有するよう呼びかけています。プログラマティック広告配信を標準化するためのロードマップを業界に提供するため、提案書「Live Event Ad Serving Program(ライブイベント広告配信)」の公開を目指しています。
連携とイノベーションを通じて大きな課題に取り組むことで、業界として、視聴者のライブストリーミング体験を向上させ、マーケターとメディア企業の双方に大きな価値を提供する、スケーラブルなソリューションを開発できます。当社は、ストリーミング時代のライブ配信イベントの広告の成功と飛躍的な未来を約束するため、すべての関係者がこうした取り組みに参加することを期待しています。
ストリーミングTVを分かりやすく解説した、Index ExplainsのストリーミングTVシリーズをぜひご覧ください。
ライブイベント広告の新しい業界標準の策定に参加を希望する方は、当社にお問い合わせください。
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