バイヤーは、希望する環境で適切なオーディエンスにリーチするため、ストリーミングTVにチャンネル、ジャンル、番組情報などのより詳細なコンテクスト情報を求めています。
ウェブやモバイルアプリなどのデジタルチャネルや、リニアTVなどの昔から存在するチャネルでも、透明性の高さは既に常識となっています。しかし、他のチャネルと比較して、プログラマティック・ストリーミングTVでは、コンテクスチュアルデータの仕組みは異なり、考慮すべきことが多くあります。
プログラマティック・ストリーミングTVの市場規模を拡大をするためには、透明性の向上が重要
マーケターは、ブランド適合性を確実にし、的確なターゲティング、適切なアトリビューションと最適化を可能にするため、リニアTVで既に実現されているような明確さを、広告が表示されるコンテンツにも求めています。
こうした可視性は他のチャネルでは 、昔から常識とされてきました。例えばウェブでは、バイヤーが通常確認するのは各インプレッション機会のウェブページのURL全体です。また、セラー、消費者、デバイスに関するその他シグナルも確認できます。同様の情報は、モバイルでも確認可能でアプリバンドルを通してシグナルを提供しています。
一方、ストリーミングTVにURLはありません。アプリバンドルはありますが、モバイルアプリのような機能は持ち合わせていません。こうした理由から、コンテンツシグナルが非常に重要となります。
例えば、Pluto TVやfuboといったアプリで考えてみましょう。こうしたアプリは様々なジャンルにわたって数百のチャンネルを提供しています。そして、各チャンネルには豊富なコンテンツが含まれています。バイヤーがバンドルのみを確認した場合、消費者がどの番組やエピソードを視聴しているかまで把握できるとは限りません。コンテンツは、ニュースからスポーツ中継、ドラマまで様々なものがあります。
その結果、安く入札するかもしれません。 例えば、バイヤーはアプリを信頼して10ドルで入札します。しかし、実際にどんなコンテンツがストリーミングされているかは把握していません。バイヤーがより多くの情報を入手し、コンテンツがオーディエンスに関連性の高いものと理解できれば、40ドルで入札したかも知れません。
このようにストリーミングTVで、さらに増す複雑さに対処し、バイヤーが必要とするレベルの透明性を提供するには、プログラマティック広告業界は、新たに、メディア企業からバイヤーへのシグナル送信方法を開発する必要がありました。
コンテンツシグナルの共有方法
コンテンツシグナルは、IABのOpenRTBプロトコルのコンテンツオブジェクトを介して、入札リクエストで共有されます。バージョン2.6には、ストリーミングTVのコンテクスチュアルデータを共有するフレームワークを定義した業界基準が存在します。
各インプレッション機会においてメディア企業はコンテンツオブジェクトのフィールドを用いてジャンル、ライブストリームの状況、コンテンツの対象年齢、言語、チャンネル、TV局、シリーズ番組名、シーズン数、各放送回タイトルなど、希望に応じて番組レベルのデータを送信できます。
そこで、メディア企業はどのシグナルをアドエクスチェンジに送信してDSPに渡すか決断します。バイヤーは、その情報を活用して適切なコンテンツで希望するオーディエンスにリーチする機会となるかどうかを判断します。
例えばマーケターが、イタリア料理の番組のサラダとブレッドスティックを紹介する放送回でファミリーレストランの広告を配信するとします。この放送回での、サラダとブレッドスティック食べ放題の広告は、非常に関連性の高い広告となります。また、マーケターは、望ましくない、もしくは関連性のないコンテクストに広告を表示させないようにもできます。例えば、クルーズ船の広告をハリケーンに関するニュースの後には、配信しないようにする等です。
メディア企業は、どのシグナルを共有するかコントロールできます。特定のシグナルに対してディールを作成することも可能です。例えば、特定のシリーズ番組名をバイヤーに公開せず、「コメディ」というジャンルに特化したインベントリパッケージを作成できます。あるいはランオブネットワーク、ジャンル、特定のシリーズ番組などの透明性のレベルによって、各在庫に異なる価格を設定できます。
コンテンツシグナルの透明性を向上
適切なテクノロジーと標準が整った現在、ビッドストリームのシグナルの透明性をさらに高め、従来のリニアTVに存在する買付の仕組みとプログラマティックの買付が効果的に競合するにはどうすればよいでしょうか?
まずOpenRTB 2.6の業界標準は、コンテクスチュアルデータの共有方法を定義しています。サプライチェーン全体のあらゆるプラットフォームで採用する必要があり、技術スタックが最新で正常な状態である必要があります。これは現在、既に進められています。また幅広く採用されることで学びがあり、あらゆる関係者にとって最適なプロトコルへと発展します。
業界として取り組むべきこともあります。一貫性のある用語や名称を使用することです。メディア企業間でコンテンツ情報が統一されている訳ではありません。例えば、あるセラーでは「食べ物と飲み物」というカテゴリが、別のセラーでは「料理」というカテゴリになっている場合があります。また「A&E Networks」が「A&E Television Networks」と示されることもあるでしょう。
最後に、メディア企業は共有を希望するだけのコンテンツオブジェクトを入力する必要があります。ストリーミングにおける広告とインベントリ共有の根本的な枠組み(英語)があるため、サプライチェーンにコンテンツ情報を送信するには、配信契約を更新する必要性が出てくる場合もあります。
また、メディア企業はプライバシーに配慮し、消費者のプライバシーを侵害せず、必要な情報を確実に提供しなければいけません。例えば、VPPA(ビデオプライバシー保護法)あるいは、ブロックバスター法としても知られる法律を遵守する必要があります。これは、メディア企業が番組レベルのデータから個人やユーザーIDへの関連付けを規制するものです。
透明性、信頼性、効果的なマーケットプレイスを促進
バイヤーは、ビッドストリームを通して、または綿密に作成されたディールのパッケージを通してどの広告をどこに表示させるかコントロールできます。これにより、業界の取り組みを強化し、サプライチェーン全体の全ての関係者に利益がもたらします。
マーケターは、どのような在庫を購入しているか理解できるようになります。これにより、質の高いコンテンツで広告配信されることが保証され、オーディエンスに対してエンゲージメントの高い、ブランドに適した体験を届けられます。
メディア企業は、自社の在庫を適切な価値で販売できるため収益の最適化を実現できます。そしてバイヤーは、綿密なターゲティングを提供するパートナー企業と協働することを希望するようになります。
透明性があり、信頼性のある、効果的なマーケットプレイスを発展させるには、メディア企業とバイヤー間でのさらなる協働と話し合いが必要です。エコシステム全体の関係者にメリットをもたらすには、既存の標準をテストし、改善することが重要です。
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