コネクテッドTV(CTV)の透明性について理解する
ロリ・グード(Lori Goode):コネクテッドTV(CTV)の規模を拡大するにあたって、透明性が最大の課題である理由は何ですか?
ロブ・ハザン(Rob Hazan):ストリーミングTV、特にプログラマティックは、この数年間で急成長しました。今こそ一歩下がって、今後重要になる既存の課題に目を向ける時です。
マーケターが、購入している在庫の詳細を理解できるよう、ストリーミングとコネクテッドTV(CTV)には、透明性を改善する大きなチャンスがあります。マーケターは、リニアTVで慣れているように、ブランド適合性、ターゲティング、適切なアトリビューション、最適化を可能にする、ストリーミング広告を配信するコンテンツに対してさらなる透明性を求めています。
例えば、特定のネットワーク、ジャンル、番組を購入しているかを理解できるようなコンテクスト情報をマーケターは求めています。
現時点では、この情報は必ずしも明確ではありません。透明性をもたらすことは、プログラマティックの拡大に不可欠です。
ロリ・グード(以下LG):聞いたことのある問題ですね。ストリミーングTVの透明性の問題は、ウェブで経験したものと似ていますか?
ロブ・ハザン(以下RH):その通りです。ウェブの黎明期を振り返ると、同じ問題がありましたね。数年前、著名なパブリッシャーが「newssite.com」のような曖昧な形でエクスチェンジ上で在庫を販売していました。その後、パブリッシャーは、誰が在庫を販売しているのか、透明性を提供するという要望に応えなければいけない事に気づきました。
最終的には、収益の向上、虚偽表示や詐欺を減らすことにつながるため、透明性に取り組み、パブリッシャー名をバイヤーに提供し始めました。
その後、すべてのインプレッション機会において、パブリッシャー名、コンテンツのジャンル、全URLを公開するようになりました。10年前は、このようなことはありませんでした。現在のウェブにおけるプログラマティックでは常識となりましたが、今日に至るまでには、長い道のりがありました。
ストリーミングとコネクテッドTV(CTV)には、非常に似た透明性の課題があり、ウェブと同様の道のりになると予想していますが、テレビのニュアンスを踏まえて、取り組む必要があります。
リニアTVで買い付けを行っていたバイヤーは、ある種の期待を抱いています。年間購入や1枠ごとの購入に慣れて、番組や放送回単位の詳細まで把握しています。そのため、デジタルとテレビの融合に伴い、バイヤーが慣れ親しんでいる購入方法とメディア企業の在庫販売方法に、技術的な面でズレが生じています。
バイヤーが求める透明性を提供するために、メディア企業からバイヤーへの新しいシグナル伝達方法を開発する必要がありました。
LG:なるほど。その他に、コネクテッドTV(CTV)で透明性をどのように確保するのか教えてください。
RG:コネクテッドTV(CTV)やスマートフォンでストリーミングする際、URLはありません。その代わりに、アプリのバンドルがあり、入札リクエストにコンテンツオブジェクトと呼ばれるものがあります。コンテンツオブジェクトは、IABのOpenRTB標準の一部で、メディア企業からSSP、DSPに渡される入札リクエストの中で使用されます。
インプレッション機会において、メディア企業がコンテクスト情報を提供する項目がいくつかあります。
- ジャンル
- ライブストリーム
- コンテンツのレーティング
- 言語
- チャネル
- ネットワーク
- 連続番組名、シーズン数、放送回タイトルなど番組単位の情報
基本的に、これらのシグナルは、メディア企業が配信する広告ユニットが含まれる、消費者が視聴する動画ストリームについて説明するためのものです。それを広告エクスチェンジに渡してから、DSPに渡します。そこで、バイヤーがシグナルを解釈し、ターゲティングしたい消費者に、希望のコンテクストでリーチできる機会かどうか判断します。
LG:コネクテッドTV(CTV)の規模を拡大するために、シグナルの透明性が重要な理由は何ですか?どうすれば、コネクテッドTV(CTV)パブリッシャーやプラットフォームは広告収入を増やせますか?
RH:シグナルの透明性は、詳細なコンテクスト情報を提供し、十分な情報を基にしたターゲティングを可能にします。
現在の透明性を考慮すると、バイヤーが把握しているのは、購入しているアプリバンドルのみかも知れません。コネクテッドTV(CTV)では、バンドルがモバイルアプリ程意味を持っていないため、シグナルは非常に重要です。
Pluto TVやTubi TVのようなアプリを考えてみましょう。無料広告付きテレビまたは、FAST(広告付動画配信)のアプリは、様々なジャンルを超えて数百もの番組を提供しています。各チャンネルにも、色々なコンテンツが含まれます。バイヤーがバンドルだけを見た場合、消費者が視聴している番組や放送回を把握できる訳ではありません。番組は、ニュースからスポーツ中継、ドラマまで含まれます。
その結果、低い金額で入札される可能性もあります。例えば、FAST(広告付動画配信)アプリを信頼しているため、10ドルで入札するバイヤーがいるかもしれませんが、バイヤーは何が視聴されているかまでは把握していません。その番組を把握して、自分たちのターゲット層が関心を持つと分かれば、40ドルで入札するかも知れません。熱帯地域のハリケーンのニュースの後に、クルーズの広告が表示されるような、望ましくない、関連性の低い状況に広告が配信されることを望んではいません。
また、透明性を確保することで、エクスチェンジが在庫を選別でき、バイヤーが高品質で、関連性の高い在庫を購入できるようにします。シグナルの透明性を確保し、利益をもたらすディールとパッケージ化されたインベントリで最適な商品化を実現し、メディア企業の需要を開拓します。
より多くのストリーミングプラットフォームが広告を採用し、市場での競争が激化する中、より効果的な収益の拡大が必要になります。それには、透明性を高めることから始まります。
LG:リニアTVのように透明性を高め、パブリッシャーの収益を拡大すると同時に、マーケターが求めているものを提供できる大きな機会があります。最終的には、コネクテッドTV(CTV)市場における完全な透明性を達成できるでしょう。何が妨げになっていると思いますか?
RH:メディア企業とバイヤー間の協力と話し合いが必要です。バイヤーは、さらなる透明性を求めるようになり、それを提供するメディア企業と取引するようになるでしょう。
OpenRTB 2.6では、SSP、DSP、広告サーバー間でのコンテクスト情報の共有方法について、業界の基準が確立されました。あとは、全ての企業がそれを適用するだけです。
この業界標準は収益の向上に直接関わるため、間もなくOpenRTB 2.6は広く普及し、メディア企業からのシグナル伝達の透明性が高まると思います。