Protected Audience APIの仕組み
Protected Audience(旧称:FLEDGE)は、インタレストグループという概念を利用します。マーケターは、プライバシーを保護し、消費者がウェブサイトを越えて追跡されるのを防止すると同時に、過去に自社のウェブページを訪れたことのある消費者に広告を表示できます。関連性のある広告が維持されつつプライバシーが保護されることは、消費者にとって良い変化です。
現在のサードパーティクッキーを利用したリターケティング
まず、ある靴のブランドを例に、現在のリターケティングがどのような仕組みなのかを見てみましょう。
- ブランド(企業)が利用しているDSPがウェブページにピクセルを設置します。
- 消費者が新しい冬用ブーツをカートに入れると、そのピクセルが消費者のブラウザ上のサードパーティクッキーIDをDSPに発行します。
- 消費者が、広告枠を販売するパブリッシャーのウェブサイトにアクセスすると、パブリッシャーが利用するSSPは、DSPに入札リクエストを送信します。この入札リクエストには、サードパーティクッキーIDの情報が含まれ、SSPのオーディエンスマッチングを可能にします。この場合は、冬用ブーツのピクセルを使用します。
- DSPが、入札レスポンスを送信するかどうか決めます。
- SSPは、入札を受け取ると広告オークションを行い、暖かい冬用ブーツの広告を消費者に配信します。
一方、この比較的基本的な例以外では、デモグラフィックやサイトを横断した閲覧行動を基に、消費者に関するかなり多くの情報を収集するためにサードパーティクッキーが使用される場合があります。
そのため、業界とChromeは、サードパーティクッキーを廃止することで、消費者データが追跡されることを防止し、広告におけるアドレッサビリティの価値を維持するモデルの移行に動き始めています。
Protected Audience APIを使ったリターケティング
Protected Audience APIを使えば、マーケターはインタレストグループを通じてオーディエンスを定義できます。オーディエンスセグメントのように考えてみてください。例えば、ショッピングカートに商品を入れたが、購入しなかった消費者などです。サイトを越えて追跡可能なサードパーティクッキーとは異なり、インタレストグループは、デバイス上で消費者のブラウザに保存されAPIへのアクセスは制限されます。オーディエンスデータは、マーケター、パブリッシャー、アドテクプラットフォームには共有されません。
Protected Audience APIが、具体的にどのように機能するのかご説明します。再度、冬用のブーツを探して靴のブランドのウェブサイトを訪れた消費者を例にします。
- DSPは、その消費者をプライバシーが保護される方法で、ブラウザに保存します。次に、ブラウザは、ブランドの「冬用ブーツに興味あり」のような、インタレストグループに追加します。これにはDSPの入札ロジックへの参照が含れます。
- その後、その消費者がパブリッシャーのウェブサイトにアクセスすると、ブラウザは設定されたSSPとそのDSPパートナー企業とのProtected Audienceのオークションを開始します。これには、SSPのスコアリングロジックへの参照が含まれます。
- DSPはブラウザからリアルタイムのデータを受け取り、キャンペーンの予算設定を通知できます。DSPの入札ロジックが、「冬用ブーツに興味あり」のインタレストグループのクリエイティブと価格を選択します。
- これとは別に、SSPはブラウザからリアルタイムのデータを受け取り、広告の品質を確認できます。SSPのスコアリングロジックは、落札した広告を選択してブラウザに戻します。
- ブラウザはオークションを確定し、落札した広告を表示します。
- 最後に、ブラウザはオークション結果をSSPとDSPに通知します。
Protected Audienceの大きな違いは、クライアント側のヘッダー入札のように、広告オークションをウェブページからブラウザのSandboxに移行することです。
DSPが入札を通知するための全てのロジックは、ブラウザにプッシュされ、ブラウザは安全な環境でオークションを実行します。消費者のブラウザだけが、何が起きているのかを把握できます。
パブリッシャーとSSPまたは、DSPとSSPの間でオーディエンスデータが共有されることはありません。DSPはどの消費者がどのインタレストグループに属しているかを把握できませんが、ブラウザは把握でき、入札に必要なすべての広告ロジックを保有しています。SSPもインタレストグループの入札を確認することはできませんが、ブラウザは把握でき、入札をスコアリングするためのオークションロジックを有します。
一方、消費者とその閲覧履歴に関しては、この場合「冬用ブーツに興味あり」という情報は、公開されずデバイスに保存されます。
さらにプライバシー保護を強化するため、Protected Audienceは、広告が表示される前に「一定期間の最低50人のオーディエンス」というk-匿名化のしきい値を満たす必要があると規定しています。このパラメータは、まだ改正を続けていますが、現在のところ、この期間は30日間です。
k-匿名化は、マイクロターゲティングを防ぐために、設計されているため、あなたが特定の広告を初めて目にする人となることはありません。ロニ・ゴードンのインタレストグループを作成する方法はありません。あと49人のロニ・ゴードンがそのグループに参加しなければ、誰もその広告を見ることはできません。
バイヤーも、作成できるインタレストグループの数に制限があるため、どの程度細かく分類するか戦略的に行う必要があります。
広告におけるアドレッサビリティへの影響
これは、アドレッサビリティへのアプローチ方法に大きな変化をもたらします。では、実際にどのようなことが起きるのでしょうか?
DSPのマーケターにとって、これはオーディエンスの捉え方が根本的に変わることを意味します。
現在、メディアバイヤーは、デモグラフィックや閲覧・購買履歴に基づいて消費者の詳細な情報を把握しています。Protected Audienceでは、さまざまなインタレストグループから複数のオーディエンス情報を同時に把握することはできなくなります。メディアバイヤーは、各インタレストグループに対して個別に入札を行います。
オークションにおけるSSPの役割も変わります。DSPが各インタレストグループに個別に入札するのと同様に、SSPもこれらの入札を個別にスコアリングする必要があります。Protected Audienceは、ビューアビリティや不正防止、マルウェア検知など、エクスチェンジが通常提供する追加機能の有効化に影響を与えます。SSPはソリューションを新たに考案し、適用する必要があります。
最終的には、レポート機能も変わりイベントまたはインプレッションレベルから集計レポートへと移行します。現在は、オークションレベルの状況を理解するのが一般的ですが、このような細かいレベルは存在しなくなり、ノイズを含んだ集計レポートや、イベントの大まかな近似値に移行するでしょう。
今後のタイムラインと準備の始め方について
2024年第1四半期、Google Chromeは技術的な準備状況を評価するため、トラフィックの1%でサードパーティクッキーを無効にします。Googleは、すでに当社を含むいくつかのアドテクプロバイダーとテストを開始しています。
パブリッシャーは、SSPと協力してテストを開始する必要があります。Protected Audienceに対応するには、パブリッシャーはPrebidを最新バージョンにアップデートし、fledgeForGptモジュールに対応する必要があります。これには、その他設定の変更が必要です。現在、その他の接続オプションも検討中で将来的に利用可能になる予定です。
DSPと代理店は、PAAPIが将来的に、オーディエンス戦略と広告効果の測定にどのような影響を与えるのか、理解を深めるためにテストに参加されることを推奨します。ウェブ上のショッピングカート全体に配置されたピクセルは全てインタレストグループを作成するために、Protected Audece APIコールに置き換える必要性が出てくるでしょう。
広告オークションをブラウザに移行することは、これまでのプログラマティック購買行動を大きく変えるものですが、消費者のプライバシーを保護する(英語)という観点においては、よい前進です。
この機会にぜひ理解を深めてください。サポートが必要な場合やご質問がありましたら、当社までお気軽にお問い合わせください。
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この動画の制作に協力してくれた、ジョシュ・プリスモン(Josh Prismon)とマイク・マックニーリー(Mike McNeeley)に感謝します。